漆芸家 新居田和人
東京芸大の漆芸科で講師をされていた清水万沙雄先生のご紹介で、松岡先生と出会いました。先生が亡くなる少し前のことで、作品の修理を頼まれて伺っていました。作業をしているそばに来ていろんなお話をされました。「漆はいいよ。何千年も持つから」とか「僕は漆の耐久性と同時に、潤いのある色感に魅かれた」ともおっしゃっていました。漆は麗しいから名づけられたといわれるように、油絵との違いはそうした色感にあり、そこに魅了されたのだと思います。
松岡先生は油絵からスタートされていますから、漆で作った絵の具を油絵のように使っていらっしゃいます。作品の中には漆でないと表せないものがあり、途中から彩漆画ということを意識されたのではないかと思います。短い期間の交流でしたが、先生はとても印象深い方です。漆に対して大きな信念をお持ちでした。画家である先生の漆に対する執念の深さに、漆芸家である僕も圧倒されます。
現在フランスのブルターニュに住みながら、漆芸家として活動をしています。私が漆を練る台は松岡先生がお使いになったものを譲り受けて、今も使っています。先生と関われたことに感謝しています。先生の作品がホームページを通して見られるのは、私自身にもたいへんうれしいことです。漆は世界でまだまだ理解されていないとおもいます。色感などはオリジナルを観ないと伝わりづらいとおもいますが、先生の作品を通して彩漆画や漆を多くの人に知っていただけたら素晴らしいことだと思います。