時を重ねるごとに美しさを讃える「漆絵」に魅せられた画家がいます。模様としての蒔絵ではなく、密蛇絵風の彩漆の紋でもなく、「漆絵」を絵画の一つのジャンルに確立するために奮闘努力した漆絵画家、松岡太和。大正から昭和という時代に、「日本の風土に適した漆絵こそ大成されなければならない」という信念のもと、先駆者として甘んじて茨の道を進み続けました。その熱き情熱には一点の迷いもありませんでした。 1894(明治27)年に生まれ、1978(昭和53)年に亡くなるまでの84年間に残した作品をご紹介します。漆の国である日本に、このような気骨のある画家が存在したことを知っていただけたら幸いです。
*漆の多彩な色を出すために研究を続けた松岡太和は、自身の描いた漆絵を「彩漆画」と呼び、他の漆絵とは一線を画していました(その理由は「松岡太和のメッセージ」の『彩漆画の誕生』を参照ください)。そのため、ここでは一般的ものは「漆(うるし)絵(え)」、松岡太和の作品を「彩(さい)漆画(しつが)」と書き分けています。ご了承ください。