『漆と工芸』(昭和16年4月号)に掲載された彩漆画「春日神社回廊」。郵船の船「春日丸」の一等喫煙室中央壁面に飾られた彩漆絵ですが、残念なことに今はもうありません。「春日神社」は松岡の故郷である大和の奈良にあります。 「生徒時代の5年ほどをこの地で過ごしたのでよく知り抜いているはずですが、描くとなると三度ならの地に足を運び参拝しては細部のデッサンなどをしました」と語っています。そして「皇紀2600年の製作として、何か全力を傾注した仕事をやりたいと数年前から念願していましたとき、ちょうどこの船の仕事の以来を受けて大作をやることになりました。ただし、本来が注文品だけに思い切った自分の仕事になし得なかったのを残念に思います」と松岡はこの冊子に書き残しています。