下落合のアトリエで春日丸の壁画を描いていたとき、庭に咲いたボケの花が美しく、硯と椅子を持ち出し画箋紙を折り片手に持ちながら毛筆で写生をはじめた。全紙2枚をつぎあわせて形をまとめ入れたもの、仮表装をして掛けて見ると案外見られると思った。この味はこれだけのもの、漆で紙にやってみるがやはり墨と画箋の味は出ない。油にも漆にもない一境地である。
112.0×138.0cm
1941年(大正16)